ミッション

DAIZを設立した理由、そしてその名前に込められた想いとは。
代表取締役会長の井出 剛へ、
プラントベースフード事業への参入についてインタビューを行いました。

社員の集合写真

2019年、創業メンバーと。中列一番左が井出代表。

井出 剛(Tsuyoshi Ide)

  • 1986年同志社大学法学部政治学科卒業。
  • 1990年シキボウ・ライフテック株式会社に入社。(髙島文子と出会い結婚する。)
  • 1997年遺伝子破壊マウスの株式会社トランスジェニック設立。
  • 2002年東証マザーズ株式公開。
  • 2005年有機栽培ベビーリーフ(日本最大)の株式会社果実堂設立。三井物産、カゴメ、トヨタが出資。(同時に短編映画制作会社を断念する。)
  • 2017年10月にDAIZ株式会社(旧大豆エナジー)設立。代表取締役社長 就任。
  • 2024年1月にDAIZ株式会社 代表取締役会長 就任。

賞罰

  • 2002年10月「新事業挑戦者表彰」内閣総理大臣表彰受賞
  • 2003年10月「藍綬褒章」(新産業貢献)受章
著作

短編小説「福島紡績」はこちら

短編小説「ビテロジェニン」はこちら

作品

まぼろしの「味気のない女」はこちら

Q

DAIZを設立した背景を教えてください。

A

下記の図表を見て下さい。各国の大豆の生産量と消費量をグラフで示しています。このグラフから2つのことがわかります。ひとつは、日本は他国と比べてダントツに大豆の消費量が多いということです。
日本人は古くから炭水化物は米から、タンパク質は大豆から摂取してきたと思われます。
ふたつめに大豆は、豆腐、豆乳、納豆、醤油、みそ、油、乳化剤の原料として日本の食品業界に大きく貢献しています。大豆はいわば食品業界の半導体です。にも関わらず日本の大豆生産量は非常に小さいのが現状です。これは大問題ですね。
機能性成分もイソフラボン、サポニン、オリゴ糖そして辻製油が開発したレシチンなどが幅広く使用されています。すでに大豆の機能性研究は出尽くしたという方もおられ、ベンチャー企業の参入の余地はないともいわれました。

主要国の大豆生産量と摂取量

大豆が原料となる食品

Q

であればDAIZは“遅れてきた青年”ですね。

A

ところがあるベンチャー企業の社長との出会いで目からウロコが落ちる経験をしました。落合 孝次氏(現 DAIZ取締役・CTO)です。
彼は私に言いました。「穀物として眠っている状態の大豆ではなく、目が醒めて遺伝子が動き始めたばかりの発芽中の大豆に目を向けてください。機能性の世界がガラリと変わりますよ。」
そして膨大な有用成分が大豆から産生される現場を目撃したのです。
落合式発芽法によって創り出される大豆は、単なる発芽大豆とはまるで違っていたのです。

シードライフテック時代の落合孝次氏
シードライフテック時代の落合孝次氏

Q

そんなに凄い技術なんですか?

A

私は文系ですからうまく表現出来ませんが、落合氏はヒトのES細胞のように、発芽直後の大豆にも外部から効果的に刺激して急激な代謝促進が得られるタイミングがあるということを実証していたのです。
代謝促進により酵素が活性化した結果、栄養価が上がり、うま味成分のグルタミン酸やアラニンが増加し、かつ消化吸収も良くなります。
つまり落合式発芽法は、大豆の「組成」を変えてしまうインパクトのある革新技術だったのです。

落合式発芽法の構図

Q

革新的な技術に出会って驚いたことはわかりましたが、
起業家として具体策はあったのですか。

A

不幸なことに落合氏のベンチャー企業は資金回収を急ぐベンチャーキャピタルや銀行、取引先の怒号に包まれ火の車になっていました。しかし私は落合氏が紡ぎ出した技術こそが日本の大豆の将来を間違いなく変えると確信しました。
そこで落合氏に熊本に来ていただき静かな環境で研究を続けてもらうとともに、代謝技術の特許化と事業化を進めました。
ところが2017年、落合氏が大病を患い約一年間休業することになりました。過去のストレスが溜まっていたのでしょう。
彼の復帰を待って、そろそろ腰を上げる時がきたと思い、2019年に社名を「DAIZ」に改め本格始動しました。
2019年、落合氏と私は米国の植物肉市場の調査のため、ニューヨークを訪問しました。
星の数ほどのフードテックベンチャー企業が参入しており、店舗や外食には彼等の商品がところ狭しと陣列されていました。
しかし我々はある重要なことに気づきました。これらの植物肉商品は原材料がすべて「脱脂大豆」だったのです。
脱脂大豆は大豆から油を搾った後の残渣物なため、脱脂大豆を用いて生産した代替肉はにおいや食感、味に課題があることを知り、落合式発芽法であればおいしさや肉さながらの食感を植物肉で実現でき、市場参入にチャンスがあると考えました。

Q

DAIZのビジョンをお聞かせください。

A

まずはタンパク質危機(プロテイン・クライシス)への挑戦です。下記のグラフを見てください。2050年代には世界の人口が100億人を突破すると予想されています。もはやこれだけの人口に必要なタンパク質を牛肉、豚肉、鶏肉、魚肉では補うことは出来ません。そこで植物でありながらタンパク質を生産する大豆の出番となります。落合式発芽法で発芽した大豆は、うま味成分のグルタミン酸や大豆イソフラボン、GABAなどの含有量が一般的な大豆に比べ大きく増加し、良質な植物性タンパク質をおいしく摂取することが出来ます。だから私たちは食肉に代わる【DAIZミラクルミート】を開発して世界の飢え撲滅に貢献することにしました。ベンチャー企業にとって高い理念を持つことが一番重要です。

世界の人口が100億人を突破する日

落合式発芽法の強みは、発芽の過程で大豆に含まれる遊離アミノ酸の組成を自由に変えることにより、グルタミン酸やアラニンなどのうま味成分のバランスを肉や魚に近づけることが可能となります。しかも生産過程では発芽大豆をまるごと使用するため廃棄物もなく、遺伝子組み換え大豆も使用していません。だからこそ"ミラクルミート"なのです。
従来のオイルカンパニーの大豆搾油残渣物や海外の代替肉ベンチャー企業との違いは、DAIZの場合、<素材そのものに力がある>ことです。
これから我々が開発したオンリーワンのプラントベース原料を世界に向けて大規模に供給していきたいと思います。

大豆
DAIZは大豆をそのまま使用しています。

また、海洋タンパクの枯渇も陸上タンパク同様に叫ばれている今、水産業では魚肉の代替需要も高まっており、DAIZではツナなど、魚代替としておいしく食べられるミラクルミートも生産しています。
くわえて養殖魚の流通量も年々上がっていますが、その魚餌に小魚を使用することに制限がかかりつつあるともいわれており、将来的には落合式発芽法での魚餌開発も可能性として視野に入れています。
さらに現在DAIZグループでは、落合式発芽法をプラットフォームテクノロジーとして植物肉にとどまらず、植物性卵素材や乳素材の開発プロジェクトも手がけています。

落合式発芽法 図解

Q

最後にDAIZのミッションを教えてください。

A

発展途上国の人口が増え続けると将来、肉や魚の恩恵を授からない子供たちが増えるのではないかと心配しています。
だからこそ、おいしくて機能性があり、そして安価な「植物肉」の出番だと思います。
社名のDAIZには温故知新のハイテク技術で、日本の<大豆>から世界の<DAIZ>へと飛翔していきたいという大きな想いが込められています。

PLANT-BASED FOODS